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公契約条例

公契約条例について

「公契約」とは、国や地方自治体の事業(工事、サービス、物品調達等)を民間企業等に発注・委託する際に結ぶ契約のことです。具体例として、施設の建設工事、公共施設管理・運営、清掃、保育園、病院医療事務、学校給食、学童クラブ、窓口業務、生活相談支援、介護・障がい者福祉施設、情報管理等、私たちの生活に密着する多くの事業が、「公契約」として民間委託の対象となっています。
「公契約条例(法)」とは、自治体が発注する公共工事・業務委託等に従事する従事者の賃金・報酬下限額を設定し、自治体・受注者の責任等を契約事項に加えることを定めた条例で、ILO(国際労働機関)第94号条約に基づいています。
2009年9月、全国で初めて千葉県野田市で公契約条例が制定されたことを契機に、公契約法・公契約条例による公契約の適正化を求める取り組み・運動が全国的に広がっています。現在までに、東京都台東区を含む全国86自治体(賃金条項型30自治体、理念型56自治体)で公契約条例が制定されるに至っています※2024年1月1日時点。

全建総連作成の公契約条例制定一覧表はこちら

新型コロナウイルスの感染拡大により、建設現場従事者を含め私たちの日常生活に必要不可欠な仕事を担う従事者(エッセンシャルワーカー)の存在が注目されています。エッセンシャルワーカーである現場従事者の賃金水準を守り、ダンピング受注を排除し、新型コロナで注目されているSDGs(持続可能な開発目標)、労働施策総合推進法等を地域の政策に取り入れて地域の活性化を図っていくために、公契約条例(法)の重要性を地域で認識・共有し、条例(法)制定運動を進めていくことが求められています。

公契約条例(法)の主な目的と効果など

従事者

低賃金労働を背景としたダンピング受注、低価格入札・過当競争を無くし公正競争を実現することで、いわゆるペーパーカンパニー等を排除し、健全な経営をしている事業者が適正な利潤を確保して、地域に根ざした事業経営ができるようになります。

市民

公共サービスの品質確保・向上により、安心・安全な生活が送れ、住民の福祉向上、地域経済の活性化等に繋がります。

自治体

公共事業の品質確保、良好な公共サービスの提供、活力ある地域社会の実現等が可能になり、職員のモチベーションアップにも繋がります。住民の定住化・雇用の安定化による納税の確保、地元事業者の健全な事業経営等によるサービスの質の向上、地元建設業者・職人の育成による地域防災・減災の強化、地域経済が発展することで税収の増加等も見込まれます。

地域組合

審議会へ全建総連加盟の地域組合から審議委員を選出し、報酬下限額、条例運営全般を中心に審議会で活発な論議がされています。公契約条例・審議会を通じて、地域建設労働組合としての役割が発揮され、地域における発言力、存在価値が増しています。

以上のように…
公契約条例(法)は、地域での「好循環」を生み出すことが期待できる条例です。

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LO第94号条約とは(1949年制定・批准有効国62ヵ国 ※2021年4月現在)

ILO第94号条約第2条第1項

「この条約の適用をうける契約は、当該労働が行われる地方において関係ある職業又は産業における同一性質の労働に対し次のものにより定められているものに劣らない有利な賃金(手当を含む。)、労働時間その他の労働条件を関係労働者に確保する条項を包含しなければならない。」

目的

①入札者の間で、労働コストが競争の一要素として使われないようにすること。
②公契約が賃金・労働条件の切り下げ圧力にならないようにすること

 

条約の背景の考え方

①公の機関は、公共工事や公共サービスの発注にあたり、これらの業務の遂行に係る労働条件に配慮すべきである。
②政府・公共団体は、モデル雇用主(発注者)として模範であるべきである。

 

内容

①批准国は公契約に労働条項(賃金、労働時間その他の労働条件を関係労働者に確保すること)を挿入しなければならない。
②公契約で働く労働者は、当該地区の関係する産業または職業における同じ性質の業務の労働協約、仲裁裁定、国内法令で決められた労働条件よりも不利でない労働条件が確保されなければならない。

※残念ながら日本政府は、ILO94号条約を批准していません。公契約・公共調達を市場原理に任せた結果、ダンピング競争を招き、そのしわ寄せが従事者の低賃金や長時間労働などの労働条件悪化を招いています。

ILO94号条約型の公契約条例(法)とは

発注者(自治体)と受注者が取り交わす契約条項に、労働条件(下限報酬額等)や下請けとの連帯責任での下限額の支払い義務を設ける。

→「第三者(この場合は従事者)のためにする契約」(民法537条)

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①公権力的規制ではなく、契約原理による発注者(自治体)と受注者の合意を前提として、受注者の決定・判断に基づき受注者の義務が発生することであり、受注者の営業の自由を犯すものではないこと。

②「第三者のためにする契約」(民法537条)を活用することで、受注者と受注関係者の義務として、従事者に対する賃金下限額以上の支払い義務を課し、下請事業者の賃金支払い義務について連帯責任を負うことを規定し、就労者が受注者に対して民事上の権利として、賃金下限額以上の賃金支払いを請求(賃金差額請求権)できること。

 

「好循環」の実現には、各自治体の実情に応じた実効性のある条例制定が必要です

 

公契約条例(法)の制定とその内容は、当該自治体の実情や課題、行政、議会、関係業界団体や労組等の諸団体、住民の理解や連携等の到達度により異なります。地域の公共工事や民間委託業務、指定管理者制度の実態、積算・発注、入札・落札における課題等を整理して、公契約の適正化について関係者の理解と合意を広げ、要求と個別具体的な対応策(仕組み・推進体制等)を考え、地域における関係者との共同により実効性のある公契約条例制定が必要です。

特に、経営者団体、自治体担当者の理解と協力が不可欠であり、地域の元請建設業者・専門工事業者団体には、公正な競争環境整備による将来を見据えた建設業の持続的発展の観点で連携、自治体担当者には予算、業務量増などへの懸念に対する丁寧な説明と理解が重要となります。

公契約条例(法)の制定が、事業者の一方的規制ではなく、施工能力を持たずに短期的利益に固執する低入札業者(ダンピング)の排除により、適正な賃金(労務費)・法定福利費、安全経費等の必要経費が確保され、適正な工期・工程による発注・受注で適正利潤の確保につながること、施工・公共サービス品質の確保や入札契約制度の改善にもつながる基礎となることなど、事業者の利益にもつながることへの十分な理解を広げていくことが必要です。

 

公契約法の制定に向けて…国と地域での両輪の運動・取り組みを進めています

 

全建総連は公契約法制定をめざして運動を進めています。政府、議会、関係団体、国民の理解が広がらなければ、法律制定は容易には実現できません。今後も各自治体での公契約条例制定自治体の拡大、地方議会から制定を求める意見書採択等、地域からの理解と実績を結集して、国会議員、国交省、厚労省、関係団体等への働きかけを継続し、地域と国の両輪の運動を進め、国での公契約法制定に向けて取り組んでいます。

契約条例(法)は…

従事する就労者の労働条件の下支えだけでなく、公共施設・サービスの品質確保・向上、発注・積算・入札制度の改善など、地域経済の発展に繋がる「好循環」を目指す条例(法)です。

 

公契約条例(法)関係資料のダウンロードは全建総連HPよりご覧頂けます。

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